-高校卒業後は福岡で勤務し、27歳の時壱岐にUターン。かつては島内に数多くの職人がいたが、現在も活動する職人の数は、斉藤さんを含め2名のみ。もう1人は斉藤さんの祖母で、同じ工房で鬼凧を共に制作している。-
Q1. 壱岐にUターンしたきっかけは何ですか?
鬼凧を継ぐためですね。元々壱岐に帰ってくるつもりも全く無くて、ずっと福岡におるつもりやったし、一番のきっかけは鬼凧です。
鬼凧は私が小さい頃からあって、当たり前のものだと思っていました。だけど、おじいちゃんが具合悪くなった時をきっかけに、大人になってから改めて意識したけど、後継者がいないじゃないですか。壱岐の中でもいろんなところに鬼凧があったりして、「無くなるのかな?」って考えた時に、おじいちゃんすごいなって。シンプルにすごいなって。これを作ってきたんやねって。やっぱ価値のある物やと思うし、無くしちゃいけないなって思うし、そうした想いから鬼凧を継ぐために壱岐に帰ってきました。
Q2. 鬼凧職人としてどんなことをしていますか?
鬼凧の制作については、基本最初から最後まで全部自分で作ってます。
家の裏の竹藪から竹を切ってきて、小さいサイズの凧はおばあちゃんが、大きいサイズは私がするんですけど、骨組みして、紙を貼って、和紙を貼って、色を塗って、出すってのが一連の工程です。前はおばあちゃんにも色塗りしてもらってたんですけど、最近目が見えなくて、今はほとんど私がやってます。
2020年には東京文化支援財団から「ASIAN CULTURE AWARD」という賞をいただいて、外国の人にも情報を発信したい想いを伝えたら英語版のホームページを立ち上げてくれました。私、英語は5段階評価で「2」を取るくらい、ほんっとに全然できなくて(笑)。でも海外の人らにもアピールできるといいなって思って、翻訳アプリとかを使いながらインスタを運用してます。
鬼凧を県外に広めたいって想いがあるので、インスタを通じて鬼凧を知ってもらったら、壱岐を観光してもらえるきっかけにもなるじゃないですか?壱岐に観光に来てくれるし、凧も買ってくれるし、なんかWin-Winな感じで壱岐も凧も知ってもらいたい。そのためには情報を発信してかなきゃいけないので、インスタ頑張ります。
Q3. 壱岐へUターンをして帰ってきた時どう感じましたか?
とりあえず何もすること無いなって。福岡がホント便利でしたもんね。
仕事帰りとか時間あればデパートに寄ったりとかできたけど、壱岐だと「どっか行くとこある!?」って言っても、行くとこ無いじゃないですか、イオンぐらいしかない。
壱岐に戻ってきた目的も、「壱岐に戻りたい!」って気持ちではなく、鬼凧を継がなきゃいけないからって気持ちがあったから、「仕方ないなー。」って言い聞かせながら帰ってきた想いがありました。でも自分が田舎もんで、ずっとおじいちゃん、おばあちゃんっ子だったんで、結局こっちの環境の方があってるのかなって。
自然も好きなんですよね。ただ景色見るだけも好きだし、朝太陽見るだけでも好きだし、夜星見るのも好きだし。田舎じゃないと見れないじゃないですか?夜だと星もきれいに見えるし、夕日も鬼の足跡やったらきれいに見えるし、壱岐じゃないと見れない景色だったり、田舎じゃないと見れない景色があって、そういうのがいいですね。
Q4. 休日の過ごし方を教えてください。
休みはあんまりなくて。というより自分が休みを作ってなくて。定休日とか作ってないから、基本工房で働いてるんですよね。することがないから、鬼凧するみたいな。休みの日も、友達に誘われて夜ご飯に行くくらい。たまに昼にも遊びに行ったりするけど、逆にみんな空いてる時間とかに何しとるんやろ?(笑)
あとは、おばあちゃんが野菜作るの好きやけん、畑耕すのはおばあちゃんがしてくれて、水かけとか手入れは私になります(笑)。そういうのがおばあちゃん好きだから、仕事休憩でやったりとか。そんな時間も好きですね。
仕事道具と色塗り前の鬼凧
Q5. あなたにとっての壱岐を一言で表すなら?
癒しですね。
自然が好きって言うのもあるし、福岡にいた時たまに壱岐に帰ってくると、その時の方がやっぱ壱岐がいいなって思って。
当時はUターンして住むなんて思ってもみなかったけど、癒されるなって。おばあちゃんちも癒されるなってのもあったし、仕事中に窓から見える景色も良くてずっと見ちゃうんですよ。朝仕事を始めるときに入ってくる日差しとか、周りには田んぼしかないんですけど、四季折々の景色を見て仕事中癒されてます。
Photo by 髙田望
【壱州人辞典とは】
地元出身者・移住者・年齢・性別問わず、“壱岐に住む(暮らしている)人”を紹介していく企画です。
壱岐島の良さを伝えるには、その地に暮らす人にフォーカスを当てることが大切だと考え、魅力的だと感じる人を紹介していくことで「この人に会ってみたい。」「この人に 話を聞きたい。」という興味を持ってもらい、人が人を呼ぶようなサイクルを作りたいと思っています。
人から人へと辿っていくことで、私たちが知らない、壱岐の人もあまり知らない面白い人に出会いました。
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