白い家と赤いポスト。
家と町の持つ愛嬌を活かして、新しい風を吹かせていく。
2018年
移住
イラストレーター
中島光教さん(長崎県壱岐市出身)
高校卒業後、壱岐を出て上京。19歳の時には漫画家としてデビューもした中島光教さんは根っからのクリエイターだ。長年東京で暮らし、壱岐に帰ってくる直前は大阪にいた。「大阪からまた東京に戻るか考えた時、同じ距離感で生まれ故郷の壱岐がありました。離島だから確実に環境は変化し生活も完全にリセットされるので、絵描き人生の畳み方を形にするには良い機会かもしれない。」そう思い壱岐へ帰ることを決めた。
移住前に市職員と一緒に空き家バンク物件を見に行ったが、1軒目は残念ながら思っていたものと違った。だが当時住んでいた大阪へ戻る前日、もう1軒空き家を見にいった。それが現在の住まい兼工房だ。「私の記憶の中に残る清潔で文化的な香りのある場所。背の高すぎない白い家とその横にある赤いポストがキャラクター性を持っていて、ここで何かクリエイティブな活動ができる。」家の修繕の大工仕事をしながら、分単位で追われる仕事からも離れる生活が今はペースがちょうど良いという。
「愛嬌ある建物らしく、ポストとワンセットになるような郵便に関わるステーショナリーや雑貨を作り、ポスト経由で島の外と繋がれるような、そんな場所や物を作っていきたい。」パートナーの草野さんと共に、空き家のセルフリノベ―ションを行いながら、唯一無二の空間を作り出している。2人はそこを”ACB工房”と名付けた。「絵描き以上のことや、大きいものを動かすことはできないけれど、島にスキルを残したい。20年、30年とかかるかもしれないけど、それを引き継ぐことができれば意味や結びになる。」”ACB工房”から技術を継承した職人が生まれる日も近いかもしれない。