古来、日本には年初に芽を出した草を摘む「若菜摘み」という風習がありました。
江戸時代になると、1月7日(人日の節句)の朝には、春の七種の野菜が入った七草粥(かゆ)を食べる風習が定着しました。
この材料であるセリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロが、「春の七草」と呼ばれています。
スズナはカブ、スズシロは大根なので畑野菜ですが、壱岐では七草粥を作る際の他の5草や、フキ・カラスノエンドウ・ヨモギなど多くの野草を野歩きして摘み取ることができます。
七草のひとつハコベラは、壱岐の道端や畔、野原などに普通に生えている野草です。畑や田んぼの中でもよく見かけます。農家の方にお尋ねすれば、こころよく採取させてくださいます。
ハコベラは、真冬でも暖かい日に白い花を咲かせている姿を見かけます。
花びらは一見10枚に見えるのですが、よくよく見ると、2枚の花弁は深い切込みによって分かれているように見えているだけで、実際は5枚であることがわかります。
スズナ(カブ)・スズシロ(大根)以外の五草は粥だけでなく、天ぷらにして楽しむことも多い野草です。
衣がカラッとした温かいうちに食すのがポイントで、軽く塩をふってサクサクっとした音や食感でも楽しめます。
ハコベラは、古くから葉に炎症を押さえる成分があることから、歯茎の止血や歯痛に効果があると言われています。
摘み取った野草は食としても種々の楽しみ方があります。スズナ(カブ)・スズシロ(大根)以外の五草はお粥だけでなく、天ぷらにして楽しむことも多い野草です。衣がカラッとした温かいうちに食すのがポイントで、軽く塩をふってサクサクッとした音や食感でも楽しめます。
七草ではありませんが、畑のそばや道端などで普通に見かけるフキノトウも有名です。芽を天ぷらにすることが多いと思いますが、壱岐ではフキの茎の独特の香りも楽しめる煮物が最もポピュラーです。
僅かな時間で多くの収穫が期待できる上に、調理も油揚げや竹の子と煮ても美味しく召し上がれます。
野原や畑などに普通に生えているカラスノエンドウも、この時期におすすめの野草です。
根、茎、花、種の全てが食べられるので、3cm程に切ってかき揚げにすると簡単に調理できます。
カラスノエンドウには、「ビタミンB1」や便秘改善作用のある「クエルシトリン」、精神鎮痛作用のある「アイピン」などが含まれ、体の健康に作用する効果があります。
一方で、春の七草のひとつセリの仲間にはドクゼリと呼ばれる有毒植物があります。ドクゼリは根茎がサトイモのような形をしているので、見分けることはできると思いますが、セリを摘む時には、地元の人に尋ねてみて下さい。素朴でも温かい言葉で教えてくださるはずです。
休日にご家族でお出かけして、自然に触れ地元の方と会話し、夜は自然を食すことで、きっとささやかでも素朴で温かい島の生活に触れられると思います。都会ではなかなか叶わないひと時です。
参考文献
改訂版 野草図鑑 ブティック社