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[ 壱州人辞典 No.93]チリトリ自由食堂/料理人:小野富美子

-移住前はフレンチやイタリアンの料理人として腕を鍛える。2018年に芦辺町のみなとやゲストハウスで過ごし、オーナー夫妻から「食堂の料理人」に誘われ快諾。スパイスの知識を身に付けたら、自分だけの道や違う地平線にたどり着けるかもしれないという予感があり続けて来られた。スパイスの世界を冒険する料理人。愛称はトミー。福島県出身、芦辺町在住。

 

 

Q1.壱岐に来てから、以前住んでいた場所で暮らしていた時との(気持ち・環境など)の変化はありましたか。

移住して1年目までは全部自分でしようとしていました。変なプライドがあったんです。いろんなところで働いてきたし、どうしても成功させたかった。“壱岐にないものを作る”っていう意味をすごく考えていたので、どんなに苦手でも迷いがあっても、「スパイスカレーの店」として、この場所を成功させるために頑張りました。

ものすごくいろんなことで悩んで、今思えば責任感もすごくて“どうしてもこうじゃなきゃダメだ”って、プレッシャーを自分自身にかけていました。でもだんだんいろんな声が聞こえ始めた。地域の人の「すごく頑張っているね」とか「ありがとう」とか、常連になって応援してくれる人とか。ちゃんと見てくれている人がいて、ふっと肩の荷が降りて頑張り続けて良かったなって思っています。

 

それと同時期に“人の夢を応援したい”って思い始めて。自分にも夢があるけど、誰かの夢と掛け合わせた時にものすごく大きな動きになって、面白い風景や予想外のことが生まれることに気が付きました。それでいろんなことをやりながらも、人の中に飛び込んで行こうと思いました。

豊かな人生って“人と人が出会って、同じ時間の中で生まれてくる”と思っていて、人との繋がりが大事だなって。食卓を囲む時間も当たり前にあって、一緒に美味しいものを食べることで、良い時間を生きている仲間っていう感覚が生まれる。それは大事にしているし、そのおかげでだんだん自分も成長できました。自分の中に閉じこもっていたら成長にも学びにもならないですよね。

 

Q3.県外との違いは?

ずっと飲食の仕事をしていますが、このお店は、たちまち(※1)が隣にあるので、子ども達の日常がすぐそこにあって、それを垣間見られるってところですかね。お客さんも観光客の人が多いけど、町の人もフラッと現れるっていうのが良いなと。でもそれは壱岐っていうよりも“チリトリ”っていうものすごく特殊な場所だからですかね。

震災があって、いろんなことを考えた結果、壱岐に来たんですが、コミュニティの一員でありながら料理人として料理をするって出来づらいんです。私は子ども達に良いものを繋げたいっていう想いがあって、何を繋げていくかっていう自分のテーマがあるから、適材適所のすごい場所に来させてもらったなって思います。

私自身、生きづらさを感じていた時期もあったので、どうしたら自分も周りも“自由に生きやすい社会”が作れて、“より楽しく人生を送れるんだろう”っていうことを考えます。子ども達には、“トミーっていう変な大人がいる”とか、“寒いのに原付乗っている“とか、“どんな風に生きても良いんだね”って、喋んなくても思ってもらえたら嬉しいですね。

 

(※1)芦辺浦地区の任意団体と、その拠点を差す。食堂と併設されている場所。

 

 

Q4.これからの壱岐がどのようになったらいいなと思いますか。

料理人の目線で言うと、トップシェフがいたり、ランキング上位のレストランは地方にあったりするんです。地方の食のアイデンティティや文化を保存するっていうことを大事にしている。なんにでも言えることだと思うんですが、その土地とか人の違いをそのまま「保存する」「活用する」それで「発展させる」っていうのが1番良いなって思っています。

都市部から流行っているものを、そのまま持って来ても、逆に伸びしろを無くしちゃうことになる。自然とか文化とか、今、保存して活用できるものが壱岐にはとにかく多い。土地とか人の違いで魅力を感じて、そこを目的に人が集まってくると思うから、全く新しいものを創り出すんじゃなくて、今あるものに最大限注目して、保存する意味で活用して発展させて、輪郭を切り出す方が、伸びしろが絶対あると思います。

 

 

自分と人の夢が掛け合わさる時に「守りたい」「繋ぎたい」「保存したい」、さらにそれをもっと良いものに変えて、「手渡したい」っていう人とご縁が重なっています。そこで自分もその人の為なら頑張れるって思うし、出会って良かったなって思う人がたくさんいます。感謝ですね。

 

どのローカルも新しい時代を創っていく動きになっていると思うけど、壱岐も新しい時代を創っていく気がします。社会の仕組みとして、いろんな上手くいかないことがあって、もう違う選択をした方が良いタームに入って来ていると思うんです。

だから競争せずに手を取り合いたいって思います。お互いの違いを楽しむことが、食も人も大事になってくるのかなと。その土地によって「美味しいもの」「採れるもの」「獲れるもの」が全く違うから楽しいんじゃないかな。それが同じになっちゃったらつまらないから、壱岐も文化の輪郭を保存しないといけない。全部そうですね。

 

 

Q4.あなたにとっての壱岐を一言で表すならなんですか?

「第2のふるさとですね。」

3~4年しかいないけど、不思議なほど信頼してくれる人も、信頼している人も増えて、ありがたいなって。震災の時に福島に対して抱いた想いが、壱岐に足を運ばせた理由でもあるから、どっちもふるさとですね。

 

震災直後に思ったこと、実現したかったことを実現出来てはいないけど、自分の中で納得する地点を見つけられた。さらに10年後に向けての目標がぼんやりあって、その過程をゆっくり楽しんで行こうかなっていう感じです。

大きな目標に現状ではたどり着けないし、これからたどり着けるか分からないけど、それに向かって手を伸ばし続けている状態は、夢中になれるというか、人生が楽しい。ちょっと手を伸ばせば多分届くんだよなっていうところに、うーんと手を伸ばして、気付いたらこんなところに居た。そこに人生の面白さがあると思っています。

それも壱岐に移住して、チリトリを任せてもらったからこそ気付けたことです。ありがとうございました。

Photo by 髙田望


【壱州人辞典とは】
地元出身者・移住者・年齢・性別問わず、“壱岐に住む(暮らしている)人”を紹介していく企画です。
壱岐島の良さを伝えるには、その地に暮らす人にフォーカスを当てることが大切だと考え、魅力的だと感じる人を紹介していくことで「この人に会ってみたい。」「この人に 話を聞きたい。」という興味を持ってもらい、人が人を呼ぶようなサイクルを作りたいと思っています。
人から人へと辿っていくことで、私たちが知らない、壱岐の人もあまり知らない面白い人に出会いました。
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壱州人辞典 | いきしまぐらし 【壱岐市公式】 – Part 8 (ikishimagurashi.jp)

 

≪この記事を書いた人≫

はんこさん

福岡県出身・宮古島育ち。けしごむはんこ作家と壱岐市地域おこし協力隊として活動。
壱岐での愛称は「はんこちゃん」

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